『転籍命令を拒否することはできるのか?』のページでも詳細に解説していますが、人事異動のうち元の会社との労働契約を解約する(退職扱いとなる)ことになる「転籍」の場合には、基本的にその転籍の対象となった労働者の個別の同意のない限り、会社はその労働者に転籍の命令を出すことはできません。 過去にグループ企業内で転籍をしていると転職をするときの履歴書の記載方法についてどう書くべきかと迷う場合が多いと思います。, また多くの人が知っているように転職活動では退職理由もしつこく質問されますが、転籍についてもやはりその背景や理由は聞かれることになります。, 今回紹介する転籍での履歴書の書き方とともに、その転籍の理由もしっかりと説明できるようになっておきましょう。, ちなみに転職エージェントのアドバイスでは履歴書に退職理由も簡単に記載するようにされています。, 分社化ということで転籍となる場合もありますが、この場合も履歴書の書き方はあまり違いがありません。, またエントリーするたびに違う企業から転籍の箇所を聞かれるので面倒に感じることも多いのですが、履歴書には正確に記載するべきといえます。, 転勤、出向といえども元の企業に在籍したままでの異動ですが、転籍では別のグループ企業に転職するような形となっているからです。, そのため人事が転籍について表記のある履歴書ではその理由や背景を疑うことになります。, といった理由があるかもしれませんが、転籍となれば戻ることはないという前提の異動なためにまず左遷や退職勧奨を強く疑われることになります。, つまり転籍では左遷などといった理由だと当然転職では不利になりますので、このように左遷ではない転籍であることを答えないといけないということです。, そのため上でも説明しましたように転籍の理由をポジティブな理由であると説明できれば転職回数が1回増えるのと同じように不利となることはありません。. 会社転籍時の退社理由の扱いについて 2015年10月06日 昨年までA社という会社で雇用されていた数十人が、今年初めB社に転籍になりました。 (1)会社分割による転籍 企業の再編などの過程で行なわれる会社分割に関する商法・有限会社法等の改正(会社分割法)及びこれに関する「会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」(承継法)が平成13年4月1日から施行され、会社分割は、企業にとって事業再編の大きな武器となっています。 © 2018 Law office LOI United. 仮に、労働者区分等では転籍義務がある場合でも、企業の側に会社分割法が定める協議義務や承継法の定める通知義務の違反がある場合には、転籍義務はなくなり個別同意の有無によることになると解されます(指針も通知義務違反については同旨)。, [3]恣意的な配転や不当労働行為 会社分割の場合、主従事労働者は個別の同意なく労働契約が承継されるのが原則です。 転籍. 要するに、会社分割の場合、承継営業主要従事労働者の場合は当然に転籍を拒否できず、指定承継労働者の場合には所定の異議申立権の行使により転籍を拒否でき、承継営業非従事労働者では当然に転籍を拒否できる、ということになります。, [1]労働者の区分 All Rights Reserved. 明治大学政治経済学部から名古屋大学法学部へ編入学し、経済学と法学を学ぶ。企業法務・企業再生を多数取扱う中島成総合法律事務所にて、一般企業法務、事業譲渡・民事再生等の企業再生事件等を中心に担当している。, 会社分割においては、合併や事業譲渡と異なる特殊性があります。企業組織再編において、労働者は再編の形態によって、再編先の企業との雇用関係の承継が異なります。, 例えば、合併は、包括承継として合併前の労働者は合併会社に、その雇用がそのまま承継されます。事業譲渡の場合には、譲渡元の労働者個人と譲受企業との同意により、その雇用が譲受企業に移籍されます。, これに対し会社分割の場合、分割契約などに承継の対象者として記載されていれば、分割先にその雇用および労働条件が、包括的に承継されることになります。, つまり、分割契約などにおいて、どのように定めるかによって、承継される事業(以下「分割対象事業」)について、主として従事する者であるのに承継されない場合や、分割対象事業に主として従事しない者であるのに、承継の対象であるとされる場合があり、労働者において承継の対象となる者とそうでない者が存在することになります。, 分割対象事業に主として従事しているのに、承継の対象とならずに会社に残る場合、また分割対象事業に主として従事していないのに、承継の対象となった場合には、主として従事する業務が変わることになりますから、労働者に与える影響は非常に大きいといえます。, この影響は、労働者の生活においても非常に重要であると同時に、会社においては労働者の意欲や生産性にも影響を与えます。, 会社分割の成功は、分割対象事業が分割後によりうまく運営されることにより達成できるため、労働者の意欲が低下して生産性が低下することは、結局、会社分割が失敗する方向に作用することになります。, そのため、会社分割において労働者の保護は非常に重要である、ということになります。この労働者保護のために、会社分割においては、「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」(いわゆる労働契約承継法)(以下「承継法」)に定める手続きを履践することが必要になります。, 以下では具体的に会社分割において、労働契約がどのように扱われるのかなどについてみていきます。, 会社分割においては、会社分割契約などにおいて、承継の対象となった労働契約は承継会社に包括的に承継されます。この場合、原則的には当該労働者の同意は必要ありません。, しかし、上記でみた通り、労働者に対する影響が大きいため、関係する労働者に対しては、会社が一定の手続きをとることを義務づけ、労働者を保護する必要があり、その手続きが承継法に法定されています。ここでは承継法に関し、大まかな内容と手続きをみていきます。, 会社分割において、分割会社と労働者との間の労働契約は会社分割契約などの定めに従い、特段の合意のない限り、承継会社に同様の労働条件で承継されます(部分的包括承継)(法759条1項、764条1項)。, つまり、会社分割契約などによって労働契約が定められ、労働者の承認なしに承継させることが可能になるのです(法758条2号、763条1項5号)。従って、会社分割の労働契約の承継については、労働者に不利益を生ずる可能性があることから労働契約承継法により、承継労働者の保護がなされています。, 労働契約承継法の対象は、会社分割に限られ、特定の労働者において労働契約の当然、かつ包括的承継の効果が生ずるものとしました。, 労働契約の承継は、「事業を単位として包括的に行われる」ものですから、承継される事業組織の内容や、労働契約上の権利義務の内容をそのまま維持するものでなければなりません。そのため、事業規模の縮小や労働条件の変更を伴う会社分割は労働契約承継法の対象から外れます。, 労働契約法は、会社分割において承継される事業に主として従事する労働者(主従事労働者)の労働契約は、承継されることを基礎に定められていて(承継法3条、4条)、主従事労働者でない者の労働契約は、これを承継する旨の記載があったとしても、異議を申し出ることにより承継がされないものとしています(承継法5条)。, 労働契約承継法7条は、会社分割に際し、分割会社に勤務する労働者全体の理解と、協力を得るための努力義務を分割会社に課しています(承継法7条)。これを一般に「7条措置」といいます。, 分割会社は、会社分割契約または分割計画を本店に備え置く日までに、分割対象事業に従事する労働者と個別に協議しなければなりません(商法等改正法附則5条)。, 個別協議に関する商法等改正法附則第5条1項の規定が設けられた趣旨が、分割会社が労働者の権利保護を図るため、会社分割により承継される事業に従事する労働者にかかる労働契約を、承継会社に承継させるか、分割会社との間で継続させるかに関して、労働者に必要な説明を十分に行い、労働者の希望を聴取したうえで決定することにあるためです。, 分割会社は、会社分割にあたって、労働者および労働組合に対し、当該会社分割に関する事項を通知することが必要です。, 主従事労働者とは、基本的には、分割契約などを締結などする日において、承継される事業に専ら従事している労働者をいいます。, 主従事労働者に該当するか否かについては、「分割会社及び承継会社等が講ずべき、当該分割会社が締結している労働契約及び労働協約の承継に関する措置の適切な実施を図るための指針」(以下「指針」)では、承継会社などに承継される事業を単位として判断するものであること。, その際、当該事業の会社にあたっては、労働者の雇用および職務を確保するといった法の労働者保護の趣旨を踏まえつつ「一定の事業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産」であることを基本とすること、とされています。, また、労働者が承継される事業だけでなく、他の事業にも従事している場合には、それぞれの事業に従事する時間、果たしている役割などを総合的に判断することになります。, 総務、人事、経理などのいわゆる間接部門に従事する労働者(以下「従従事労働者」)であっても、承継される事業のために専ら従事している労働者は、主従事労働者となります。なお、従従事労働者が承継されない事業の業務も行っている場合には、上記のように従事する時間や役割などを総合的に判断することになります。, 分割会社は、通知対象の別に応じ、次の通知事項を通知期限日までに書面で通知する必要があります。, 通知日(指針上、通知を行う日として望ましいと規定している日)や通知期限日(法律上、通知を行うべき期限を規定している日)は、株式会社(株主総会の要・否)と合同会社の別により異なります。, 上記の場合には、これらの労働者は、異議の申出を行うことができます。異議の効果として、労働条件を維持したまま労働契約が承継され、または分割会社に残留することになります。, 異議の申出は、労働者がこれまで主として従事してきた業務から切り離される、といった不利益から労働者を保護するという考えにもとづき規定されたものです。異議の申出は、分割会社が指定した異議申出先に、書面で通知します。, 分割会社が定める異議申出期限日は、通知期限日の翌日から承認株主総会の日の前日までの期間の範囲内で分割会社が定める日です。株主総会が不要な場合、または合同会社の場合は、分割の効力発生日の前日までの日で、分割会社が定める日となります。, この点、分割会社異議申出期限日を定めるときは、通知がされた日と異議申出期限日との間に、少なくとも13日間をおかなければなりません。これは労働者が異議の申出を行うか否かを判断する期間として、最低2週間は確保する必要があると考えられているためです。, この点、会社分割の際、労働者について会社分割の対象とせず、労働者から個別に同意を得ることによって、承継会社などに転籍させる、いわゆる「転籍合意」という手法がとられていることがあります。, しかし、転籍合意により承継会社などに主従事労働者を転籍させる場合であっても、法に基づく通知や、5条協議などの手続きを省略することはできません。, また、転籍合意に、労働条件が維持されない、承継について異議の申出ができない、異議の申出があった場合に労働条件が維持されないといった、合意がある場合でも、その効力は否定されるので注意が必要です。, 主従事労働者について、転籍合意の場合と同様に会社分割の対象とせずに、分割会社との労働契約を維持したまま、承継会社などとの間で新たに労働契約を締結し出向させる場合も、通知や5条協議などの手続きを省略することはできません。, 会社分割によって、労働契約(労働条件)は包括的に承継されます。では、退職金の扱いはどうなるのでしょうか。以下でみていきます。, 会社法の規定にもとづき承継会社などに承継された労働契約は、分割会社から承継会社などに包括的に承継されるため、その内容である労働条件についても、そのまま維持されます。, 労働条件の変更を行う際には、労働組合法や労働契約法における労使間の合意が必要であることから、会社分割の際には、分割会社は会社分割を理由とする一方的な労働条件の不利益変更を行ってはならないことになります。, 退職金制度については、労働者と使用者との間で権利義務関係が認められるため、当該労働者の労働契約が承継会社などに承継される旨を分割契約などに記載されることにより、勤続年数などについて通算されることになります。, 他にも、年次有給休暇の日数、退職金額など(法定外休業給付額、永年勤続表彰金を含む)の算定にかかる勤続年数なども同様の取り扱いとなります。, 会社分割のうち、既存の会社が分割対象事業を承継する吸収分割の場合、分割対象事業にかかる労働者は、分割会社との労働契約(労働条件)を承継し、もとから承継会社にいる労働者は、承継会社との労働契約(労働条件)となり、1つの会社で2つの制度が存在することになります。, この場合、労務処理にかかる負担が大きくなることから統一することが望ましいとも思われますが、上述のように、労働条件を不利益に変更する場合には、労働契約法第10条の要件を満たす就業規則の合理的変更による場合を除き、労使間の合意(労働組合法上の合意(労働協約)や労働契約法における労使間の合意)が必要となります。, 会社分割による組織再編の場合、労働契約については労働契約承継法をはじめとする法の手続きを履践する必要があります。これら法の趣旨は労働者の保護ですが、労働者の労働意欲は会社の生産性にも影響し、会社分割の成功・失敗にも通じることになります。, そのため、会社分割を実行する場合には、十分な検討のうえ実行するべきですし、失敗しないためにも弁護士やM&Aアドバイザーなどの専門家の助けを必要に応じ、検討するべきでしょう。, お電話でのご依頼も受け付けておりますので、お急ぎの方はお電話にてお問い合わせください。, 本資料では実際の事例や企業価値評価の手法をもとに「企業価値評価額100億円」の条件を紹介します。, 上記以外の労働者であって、承継会社などに承継される労働者(以下「承継非従事労働者」), 会社が主従事労働者を分割会社に残留させる場合(分割契約などに承継する旨の定めが無い場合), 会社が非主従事労働者を承継会社などに承継させる場合(分割契約などに承継させる旨の定めがある場合). ▷関連記事:M&Aとは?M&Aの目的、手法、メリットと流れ【図解付き】, 東京都出身。名古屋大学法科大学院卒。 会社分割を理由にした従業員の転籍・出向をする場合の注意点 . 先ず、承継営業主要従事労働者か否かの差異が最大の問題となりますが、この点に関しては承継法施行規則及び指針が詳細な基準を示しています。, [2]協議義務や通知義務違反の場合 会社分割による組織再編の場合、退職金や人事異動が発生するため、労働者の保護を目的とした労務部分での法整備がなされています。本記事では、会社分割時に注意すべき労務関係について解説します。, ▷関連記事:会社分割とは?メリットから意味や種類、類型までを解説 転籍では主に会社都合で行われますし、しかも退職しているわけではありません。 そのため上でも説明しましたように転籍の理由をポジティブな理由であると説明できれば転職回数が1回増えるのと同じように不利となることはありません。 人事から見て登録するべき転職エージェント. その他、企業が、労働者の区分を回避しようと分割前に恣意的な配転をしたような場合や、労働組合の弱体化を狙っての転籍を行なった場合は、転籍義務が否定される場合があります(指針)。, 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