白川道『竜 の道』 (飛翔 ... (『竜の道(上)』裏表紙のあらすじより) 三つの約束 『竜の道』の物語は、双子が養父母を殺すところから始まります。 火事に偽装した完全犯罪。 捨て子だった竜一と竜二を奴隷のように働かせ、日常的に虐待までしていた最低な養父母を葬り去ることに一切� 五〇億の金を三倍に増やした竜一と竜二。彼らの狙いは、少年期の二人を地獄に陥れた巨大企業を完膚なきまでに叩き潰すこと……。金と才覚を生かす双頭の竜の熾烈な復讐が加速していく。極上のエンターテイメント。 矢端竜一は魑魅魍魎が蠢く裏社会の支配を目論んだ。手始めに、株の業界紙を発行する新聞社に潜り込、その乗っ取りに成功する。野心の塊のような竜一の疾走。それは、双子の弟・竜二との約束を果たすためだった。 (adsbygoogle=window.adsbygoogle||[]).push({}); あとでくわしく説明しますが、ドラマ『竜の道 二つの顔の復讐者』は原作小説とけっこう違います。, ちょっと大げさかもしれませんが、ほとんど別の物語になってると言ってもいいでしょう。, そこで注意なのですが、これから始まるのはあくまで小説『竜の道』のネタバレ解説です。, もちろんドラマと共通する設定や出来事もあると思いますが、ドラマのネタバレとしては不確実であることをご承知おきください。, 億を超える金に群がるクズ共を冷徹に操る竜一は、大物ヤクザ・曽根村の信頼を勝ち取るべく、殺人にまで手を染める。, 捨て子だった竜一と竜二を奴隷のように働かせ、日常的に虐待までしていた最低な養父母を葬り去ることに一切の躊躇はありませんでした。, 心優しい吉野夫妻は兄弟を差別することなく、お腹を空かせた兄弟に温かい食事を与えました。, 吉野家の一人娘である美佐も兄弟になついていて、竜一も竜二も実の妹のようにかわいがっていました。, 吉野夫妻は運送業を営んでいたのですが、強引な方法でグループを拡大している二階堂急便に会社を乗っ取られてしまったんです。, 竜一が目指すのはヤクザを使う側であって、組長や社長といった小さな肩書きに収まるつもりはさらさらないんですね。, 竜一は「株式日日新報」という株の新聞を発行する会社を乗っ取りましたが、それはまだまだ野望の一歩目にすぎません。, 曽根村からの信頼を勝ち取るため、竜一はまるで暗殺者のように曽根村の邪魔になる人間を(一切の証拠を残さず)消して見せました。, 初期の竜一は曽根村の信頼を得ることに全力を注ぎ、見事、気に入られることに成功したのでした。, というのも、竜一は「斉藤一成」という天涯孤独の男になりすましていたのですが、その偽装がいまいち中途半端だったからです。, 事実、曽根村は「もともと斉藤一成は頭が悪かった」という情報から、竜一の偽装を見抜いてしまいました。, リオへの旅立ちは曽根村の指示であり、そこで竜一は今度こそ見破られることのない完璧な戸籍を手に入れることになります。, くわしくは割愛しますが、竜一は悪魔のように知謀をめぐらせ、株の詐欺によって百億円もの大金を手中に収めることに成功します。, 警察はもちろん犯人探しに血眼になりましたが、その頃にはもう「斉藤一成」はこの世に存在せず、竜一は顔も名前も別人になっている、という寸法です。, 飛翔編のラストシーンは、竜一がこれまで利用してきた(つまり少なからず竜一の情報を知ってしまっている)部下を容赦なく銃で撃つシーンでしめくくられます。, 野望の前には人の命を奪うことなどどうということはない、と言わんばかりの兄弟の短い会話にはシビれました。, 表向きはキャリアのエリート官僚としての生活を送りつつ、虎視眈々と復讐の爪を研いでいました。, そのいでたちはまるで人気俳優か人気モデルかのようで、竜二は女性にモテすぎてうんざりするほどでした。, 憎き敵・二階堂源平の一人娘である「まゆみ」を惚れさせることなど、竜二にとっては赤子の手をひねるようなものです。, 竜一に比べて危険のない役割を与えられていることに、竜二は心苦しさを覚えるほどでした。, 『竜の道』は本当に《男の世界》って感じの物語なんですが、ただ一人だけ異彩を放つ女性が登場します。, 竜一は仕事ぶりによって曽根村からの信頼を勝ち取りましたが、咲と結婚することでさらに進んで曽根村の《家族》になります。, まさに「女傑」という言葉がピッタリの咲は、女性版の竜一といえるほどの頭脳と野心をあわせ持っています。, 「日本を留守にし、私は違う人間となって戻ってくる。今、目の前にいる私は、そのときには、違う顔になっているはずだ」, 「私と一緒になると、凡庸な幸せとは縁がなくなる。場合によっては、地獄を見ることになるかもしれない。その覚悟はあるかね?」, 「凡庸な幸せなど、露ほども興味はありません。地獄があるというのなら、それを見させてもらうのも、人間の一生でしょう」, 咲は飛翔編では影が薄いのですが、次の昇龍編では欠かせない登場人物として縦横無尽に活躍することになります。, 巨額詐欺事件を首謀した竜一は50億の金を残し、ブラジルに潜伏した後、整形手術を施し東京に舞い戻った。, ちなみに、昇龍編は飛翔編のラストから四年後の1986年(昭和61年)から始まります。, 竜一はブラジルで和田猛という日系ブラジル人の戸籍を手に入れ、帰国後は咲の籍に入りました。, 竜一は投資会社「グローバルTSコーポレーション」を設立し、破竹の勢いで事業拡大を進めていきます。, もちろん二階堂急便を倒す力を手に入れるためでもありますが、竜一にとって復讐はただの通過点にすぎません。, 竜一「おれの最終目標は、国内はおろか、海外からも認められる一大ホテルチェーンをつくりあげることだ」, 竜二も美佐も本心では「今すぐ結婚したい」とまで思っているのですが、竜一にしてみればそれを許すわけにはいきません。, 一つ目は、美佐と結婚することで竜二の気が緩み、復讐の意志が弱まってしまうことをおそれたからです。, 「おれと竜二が進もうとする道に、美佐は障害となる。彼女といると、竜二の心が揺れ動いてしまう。おれはそれが心配なんだ」, しかし、もともと心根が優しい竜二は、いつしか天下よりも美佐との幸せを掴みたいと願うようになっていました。, コインの表裏のように一心同体だった双子は、こうして美佐という存在のせいでふたつに割れてしまいます。, 予知能力によってピタリと自然災害を予言してみせた美佐は、今や「未来との架け橋を持つ少女」としてマスコミから注目されています。, そんな美佐ですから、もしも竜二とつきあいでもしようものなら、必ずやマスコミから好奇の目を向けられることになるはずです。, そうして竜二の過去が洗われれば、養父母を葬った火事に疑問を持つ人間が現れるかもしれません。, 『火事は兄弟の犯行によるものであり、養父母と一緒に亡くなったはずの兄・竜一は今も生きている』, 決してバレてはいけない真実に誰かが辿り着くとしたら、そのきっかけは美佐と竜二の関係ぐらいなものです。, 美佐は竜一のことを「いちあんちゃん」、竜二のことを「にあんちゃん」と呼んでいます。, どんなに竜二が「竜一はもう生きていない。この人は別人だ」と言っても、美佐は納得しません。, 竜一はますます美佐への警戒を強め、今後は一切美佐に近寄らないと心に固く誓うのでした。, 「竜二。おまえは、運輸省を辞めろ。そして、まゆみと結婚するんだ。結婚して、源平の心を掴め。二階堂急便を手中に収めろ」, 「……わかった。そうしよう。竜一は危険な橋を渡っているのに、このおれひとりが、のほほんとして黙っているわけにはいかない」, 復讐を誓った数年前、大企業・二階堂急便は雲の上の敵であり、二階堂源平は刃の届かないはるか格上の相手でした。, しかし、表と裏、すでに十分な力をつけた兄弟にとって、今や二階堂源平(二階堂急便)など恐れるに足る相手ではありません。, 事実、強気なワンマン社長として有名だった二階堂源平は竜二に媚びへつらい、「娘と結婚してほしい」と土下座まですることになります。, まゆみは「竜二と結婚できなければ死ぬ」と言い出すほど竜二に飼いならされていましたし、竜二の有能さと資金力は源平にとっても喉から手が出るほどほしいものだったからです。, 二階堂急便への復讐など、もはや兄弟にとってはさらなる飛翔のための踏み台でしかありません。, 政界との太いパイプを持つ二階堂急便に竜二を送り込んだのは、竜二を政治家にするための足がかりをつくるためでもありました。, 竜二が二階堂急便を手中に収める一方、竜一は裏で二階堂急便を崩壊させるための仕込みを着々と進めていきます。, 竜一が指先ひとつ動かすだけで、二階堂源平はいつでも地獄に突き落とされることになります。, 竜一の最大の武器は自らの才能と度胸ですが、その武器を自由に振るえているのは曽根村という後ろ盾のおかげです。, 昇龍編で竜一は会社(グローバルTSコーポレーション)の事業拡大を急ぎますが、それは曽根村なしでもやっていけるようにするための土台づくりでもありました。, 曽根村と竜一の関係は個人的なものなので、このまま曽根村が亡くなれば「紫友連合会」とのつながりは切れてしまいます。, 「ここからさらにおもしろくなるぞ!」と予感させるこの場面で、しかし文末にはこんな二文字が並んでいました。, 昇龍編のラストは、起承転結でいえば、ちょうど『承』が終わって『転』に突入したところだったように見受けられました。, 少しでもモヤモヤが解消されるよう、わたしなりに本当の結末を考察してみたいと思います。, 「大きな火、それも野原を焼き尽くすような大きな火だったわ。その火のなかに、あの人(咲)がいたの。それもひとりじゃなかった。誰かはわからなかったけど、男の人よ。ふたりとも、その火のなかで、なにかを叫んでいた……」, もちろん「だけど生きていた」という展開の伏線である可能性も否めませんが、実際に小説を読んだわたしの肌感覚としては、, 無敵無敵で快進撃を続けてきた竜一が無敵のまま天下取って終わり、では物語としてイマイチ締まりません。, 竜一も咲も十分すぎるほど悪人ですし、『短く太く生きる』みたいな人生観の持ち主です。, むしろ散り際こそひときわ輝いて、読者に鮮烈な印象を残すような名場面を演じてくれるのではないかと思いました。, 仮に竜一が失脚したとして、竜二は一人でも「三つの約束」を果たそうとするでしょうか?, 時々、このまま美佐と誰も知らない未知の土地に行ってしまいたい気持ちに駆られることがある。, もし竜一がこの世を去ったなら、竜二はきっとすべてを捨ててでも美佐と安全に暮らしていける道を選ぶのではないでしょうか。, よく考えてみれば竜二は罪らしい罪を背負っているわけでもありませんし、降りかかる火の粉を払いのけるだけの能力と資金も持ちあわせています。, 大まかな方向性としては、そんな結末が予定されていたのではないかと個人的には思いました。, 竜一(玉木宏)と竜二(高橋一生)は、生まれてまもなく小さな運送会社を営む吉江夫妻に養子として引き取られた双子の兄弟。, その後、夫妻の間に生まれた妹の美佐(松本穂香)を加え、5人家族として仲良く暮らしていた。, しかし、二人が15歳のとき、霧島源平(遠藤憲一)率いる運送会社の悪質な乗っ取りに遭い、多額の借金を抱えた両親は、自殺してしまう。, 二人は、両親から命を、そして幼い妹の美佐から実の親を奪った霧島への復讐を誓い合う。, 小説は未完ですが、ドラマではオリジナルの結末まで描かれるということで、きっと源平への復讐完遂がゴールになっているのでしょう。, 一方、原作小説における二階堂源平は言ってしまえば小物というか、双子にとっては利用して捨てるだけの(格下の)存在にすぎません。, 主人公の竜一には源平個人への憎しみなどほとんどなく、その意識は最終目標である「一大ホテルチェーンをつくる」という野望に向けられていました。, 一方、小説における双子の復讐というのは辛い幼少期があったからこそのもので、その対象は『自分たちを救わなかった世間すべて』です。, その行動は時に冷酷無比であり、竜一なんか片手で足りないくらいの人数をその手で無慈悲に始末しています。, 野望の道を突き進む竜一の姿はハードボイルドなカッコよさ、いわば悪の魅力にあふれていて最高でした。, ドラマがおもしろくなるかは今のところ未知数ですが、少なくとも原作小説『竜の道』は(未完でも)おもしろかったです。, 今回は泣く泣く省略したのですが、本当は竜一がいかに天才的に立ち回って成り上がっていったのか、くわしくお伝えしたかったです。, 『竜の道』は近年の文芸とはまた毛色の違うハードボイルドな長編で、読んでいて新鮮な感動がありました。, 未完にも関わらず小説になっているということは、それだけの魅力があるからということでしょう。, 小説はドラマとは別ものなので、「ちょっと長い小説読みたいな~」という気分のときにでも是非チェックしてみてください。. 矢端竜一はエリート官僚の世界に飛び込んだ。兄・竜一との約束ーーある大物実業家への復讐ーーを果たすために。表と裏から攻めて、あいつを叩き潰す。金と欲が行き交う修羅の道を突き進む双子が行き着く先は?, 『竜の道 昇龍篇』 Kindle 端末は必要ありません。無料 Kindle アプリのいずれかをダウンロードすると、スマートフォン、タブレットPCで Kindle 本をお読みいただけます。, 矢端竜一は魑魅魍魎が蠢く裏社会の支配を目論んだ。手始めに、株の業界紙を発行する新聞社に潜り込み、その乗っ取りに成功する。億を超える金に群がるクズ共を冷徹に操る竜一は、大物ヤクザ・曽根村の信頼を勝ち取るべく、殺人にまで手を染める。野心の塊のような竜一の疾走。それは、双子の弟・竜二と交わしたある約束を果たすためだった…。, 全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。, さらに、映画もTV番組も見放題。200万曲が聴き放題