「無駄な仕事が全部消える超効率ハック」 ゆえに、仮説Bは正しいと考えられる, 例)長年対立してきたA国とB国が同盟を結んだ。AB間の同盟は、C国の核開発にあると考えられる(仮説)。他に説明できる仮説がないため、この仮説は正しいと考えられる, どれも、経験的に(つまり自分の目で見て)観測した事実から、法則性を導き出す方法であるということが分かると思います。このように、個々の個別的な命題から普遍的な命題を導き出すのが、帰納法なのです。, 代表的な「枚挙法」から説明すると、A1はBである、A2はBである、というのが個々の経験によって導き出される命題(個別的命題)です。つまり、目の前にいるカラスを見て、「これも黒い」「あれも黒い」と経験的に命題を得ることです。, ここから、「(おそらく)すべてのカラスは黒い」という普遍的命題を得る、つまり法則を導き出すのが帰納法です。, 日常的にも「昨日は勉強すると眠くなった」「今日も勉強すると眠くなった」「おそらく、自分は勉強すると眠くなる体質なんだろう」のように自然に使うことがあると思います。, このように、経験的に得られる命題から普遍的な命題を導き出すことが、帰納法なのです。, 帰納法は、経験論哲学者であるフランシス・ベーコン(1561年ー1626年)がその原型を作ったため、ベーコン流帰納法とも言われます。, 帰納法の場合、演繹法のように前提が正しければ結果も必ず正しくなるとは言えないのが特徴なのです。, たとえば、「枚挙法」で分かるように、「あのカラスは黒い」「このカラスも黒い」という事実をどれだけ積み重ねたところで、「すべてのカラスが黒い」とは言えません。, 世界に1匹でも「白」や「灰色」のカラスがいたら、「すべてのカラスが黒い」とは言えないからです。, そのため、帰納法は演繹法のように、論理的に必ず正しいという答えを導くことができないのです。, したがって、帰納法はどこまで言っても「確からしい」という蓋然性を高めることしかできないのです。, そこで1章の最後に出てきた「演繹法を使えば必ず正しい結論が得られるなら、研究では必ず演繹法を使うべきだ」という主張が出てくるのですが、帰納法は知識を拡張できる長所があります。, 演繹法は前提に結論となるものが含まれているものでしたが、帰納法の場合、前提には含まれていない新しい知識(すべてのカラスは黒い、など)を導き出せます。, そのため、たとえ論理的に必ず正しいことではなくても、帰納法によって新たな仮説を導き出していくことはとても大事なのです。, このように、演繹法と帰納法には一長一短があるため、両方を組み合わせて使うことが大事なのです。組み合わせて使う方法をこれから説明します。, 仮説演繹法(hypothetico-deductive method)とは、帰納法によって仮説を提示し、仮説から「予測」を演繹し、その「予測」を実験によって確かめる方法のことです。, 戸田山和久の『科学哲学の冒険』という本では、仮説演繹法の代表例として「産褥熱(さんじょくねつ)」を用いて説明されています。とてもわかりやすいので、この例を元に解説します。, 「産褥熱」とは、イグナッツ・フィリップ・ゼンメルワイス(Ignaz Philipp Semmelweis)という医師によって「手を洗うことで感染症が防げる」ということが明らかにされた例です。, この事実から帰納法によって、死体に含まれる物質が体内に入っており、それが産褥熱の原因になると考えました。これが「②問題に対する仮説を作る(帰納)」です。, 次に、「お産の前に手を洗うことで発生率が防げるかもしれない」という仮説を立てました。これは実験によって確かめることができるため「③仮説から実験可能な命題である予測を演繹する」です。, これは予測であるため、実験して確かめる必要があります。そこで、実際に手洗いを行って発生率を検証したところ、産褥熱の発生を抑えることができました。, こうして、手洗いという実験によって「予測」の確かさが分かったため、「仮説」が正しかったことが分かります。もし実験によって「予測」が間違っていることが分かれば、それは「仮説」が間違っていたことになります。, 思い出していただきたいのですが、演繹法には「新しい知識が得られない」問題があり、帰納法には「必ず論理的に正しいとは言えない」という問題がありました。, しかし、仮説演繹法を使うことで、新しい知識が得られて、かつ論理的にも正しいことが言えることになるのです。, 仮説演繹法も実験によって確かさを確認するのですから、100%予測が正しいとは言えず、一定の範囲で「確からしい」としか言えないのです。, 産褥熱の例の場合は、手洗いという実験によって「発生率が抑えられた」としていますが、100回手洗いして発生率が抑えられても101回目の手洗いでは発生率が抑えられないかもしれません。このような可能性を、論理的にはゼロにすることができないのです。, とはいえ、演繹法の「新しい知識が得られない」という特徴をカバーする点で、やはり仮説演繹法はより進歩した手法なのです。, さて、ここまで演繹法と帰納法の一般的な解説をしました。しかし、実際にはこれらの方法を自分の研究対象にマッチさせて活用できなければ意味がありません。, いわゆる理系と言われる自然科学、工学などの実験が可能な領域の場合、演繹法、帰納法、仮説演繹法などの方法はある意味シンプルに使うことができます。, しかし、社会学、経済学、政治学といった社会科学の領域や経営学などの現実の社会を対象にしたリサーチの場合、演繹法、帰納法、仮説演繹法などの利用する場合には、注意が必要です。, これは帰納法によって「問い」を明らかにしようとした例ですが、「これは論理的に正しいの?」と疑問を持ちませんか?, もし、本当に要素Aによって成長できたかどうかを検証しようと考えたら、他の条件を不変にして要素Aのみで成長が成し遂げられるか実験しなければなりません。しかし、社会を対処うにした領域ではこれが困難です。, また、成長に貢献した要素は無限に抽出可能ですので、上記の抽出が正しいとも言えません。さらに、実社会ではさまざまな要素が影響し合っているため、それぞれの要素が独立しているとも限りません。, このように、社会科学の領域は実験が難しく対象が複雑であることから、帰納法を使うことに注意が必要なのです。, 演繹法は、前提(普遍的命題)から結論(個別的命題)を引き出すものでしたが、社会科学ではこの「前提」とするものが必ず正しいとは言いがたいことが多いです。, など、必ず前提が正しいとは言えません。そのため、このような前提から導き出した結論も正しいとは言えません。, これは一例ですが、社会科学の多くの領域では正しいと言える前提が見つけられないために、演繹法も活用する上で注意すべきなのです。, 結論を言えば、社会科学では論理的に100%正しいと言える結論を導き出すのは難しい、という前提のもとで、さまざまな推論の長所短所を理解し、組み合わせて使っていく、というのが答えです。, そして、論理的正しさを高める方法については過去に様々な研究がなされ、その方法論がまとめられた良書があります。最後に演繹法、帰納法を応用発展させた方法論が紹介されている、おすすめの本を紹介します。, これから紹介する本は、演繹法、帰納法を含むさまざまな研究手法が紹介された良い本です。社会学、政治学、経済学、経営学などの社会科学を学ぶ方や、会社で何らかのリサーチをしなければならない方におすすめです。, オススメ度★★★保城広至『歴史から理論を創造する方法ー社会科学と歴史学を統合するー』(勁草書房), この本は、社会科学の「恣意的に事例をピックアップして理論化しがち」という問題と、歴史学の「記述重視で理論化を軽視しがち」という問題をクリアする、「中範囲の理論」という方法を提唱している本です。とても良い本なので、方法論を学びたい方は必読です。, この本は「政治学」という副題が付いていますが、実際にはあらゆる社会科学の研究に共通する方法論について解説しています。初心者でも問題なく読める内容なので、ぜひ読んでみてください。, オススメ度★★戸田山和久『科学哲学の冒険ーサイエンスの目的と方法をさぐるー』(NHKBOOKS), 研究の方法論としてではなく、論理学や科学哲学としてこれらの推論が詳しく知りたい場合は、この本がおすすめです。, 一部の書籍は「耳で読む」こともできます。通勤・通学中の時間も勉強に使えるようになるため、おすすめです。, Amazonプライムは、1ヶ月無料で利用することができますので非常に有益です。学生なら6ヶ月無料です。, などの特典もあります。学術的感性は読書や映画鑑賞などの幅広い経験から鍛えられますので、ぜひお試しください。, このサイトでは、他にも研究の方法論として役立つテーマを複数扱っていきますので、ぜひブックマークしてください。, リベラルアーツガイドは、質の高いコンテンツを作成し続けるためにご支援をお願いしています。詳しくは下記ページをご覧ください。, 当メディアは純広告(メディア内に設置する広告)を募集しています。詳しくは以下のページをご覧ください。, 前提の中に結論となるものが含まれているために、結論が出たところで新しい知識が得られない, とある変則的な現象が起こった理由について、とある仮説を立てると説明できる場合、その仮説は正しいと考えられる、と予測する方法, 社会科学では論理的に100%正しいと言える結論を導き出すのは難しい、という前提のもとで、さまざまな推論の長所短所を理解し、組み合わせて使っていく, 仮説演繹法は、帰納法によって仮説を作り、演繹法によって仮説から実験可能な予測を導き出し、その予測を実験によって確かめる手法, 問い:第二次世界大戦後に急速に経済成長を成し遂げた国家が、なぜ成長できたのかを知りたい, 事例のピックアップ:戦後に急速な成長を遂げた国をピックアップし、成長できた要因をピックアップして事例研究する, 国際社会はアナーキーであり、国家はパワーを手段として行動するというネオリアリズムの前提.