「ピアノトリオ」「ワンホーン・カルテット」「ヴォーカル」 という三大定番フォーマットの中から ディスクユニオン・スタッフが太鼓判を押す厳選の100枚を発表!現代ジャズ新定番100選 6 jazztaikoban_1603.indd 1 2016/03/16 13:21 コペンハーゲンの俊英ベーシスト、ジャスパー・ホイビー率いるエキサイティングなピアノトリオ、フロネシス。現代ジャズを代表する辣腕ドラマー、マーク・ジュリアナを迎えた名作3rdアルバム『Alive』 … ピアノトリオ。 スウィング感のある軽快な曲や、しっとりとしたバラード曲が中心のアルバム。 他はクールな8、悲しく力強い11など。 ジャズの王道ピアノトリオといった感じです。 ニタイ・ハーシュコヴィッツ / Nitai Hershkovits, アーロン・パークス, サム・ハリス, シャイ・マエストロ, ジェイソン・モラン, ジェラルド・クレイトン, ジャズ・ピアノ, ジョン・エスクリート, ダニー・グリセット, ダビィ・ビレージェス, ティグラン・ハマシアン, ファビアン・アルマザン, マット・ミッチェル, ロバート・グラスパー, 現代ジャズ入門, ファビアン・アルマザン来日インタビュー 話題作『Alcanza』のバックボーンに迫る. 今回Untitled Medleyではアメリカで活動経験のある1975年から1989年生まれのピアニストの中から、音楽的にもジャズ・シーン的にも重要なミュージシャンを12人ピックアップ。これから現代ジャズを聴く人にも役立つ「ジャズ・ピアノの新定番」となるような作品を紹介してみた。 スイスのピアノトリオ。ゴーゴー・ペンギンをクラブ的とするなら、コリン・ヴァロンは現代音楽的。シンプルな旋律を反復させていくスタイル。ミニマルミュージックと呼んでもいいかも。ずーっと聴いてられる感じというか。でもってこのシンプルな ほら、結局のところ、ロックやヒップホップってのは演奏ができない(もしくは下手な)素人がやる音楽なんですよ。, 演奏ができなければ表現の幅が狭まるわけで、音としては当然面白みのないものになっちゃうよね。, ポイントは音の中に黒人特有の黒さがないこと。全員スウェーデン出身の白人なわけだから黒くしようがないよね笑。ブラックミュージック成分の欠如は叙情的なフレーズとクラブ的なリズムとで埋め合わせてる。だからクラシックのリスナーにもクラブミュージックのリスナーにもウケがいい。ただピアニストが事故死してしまっているため、イー・エス・ティーの新譜は永遠に出ない。, イー・エス・ティーが白人のジャズならば、こっちは典型的な黒人のジャズ。ただし昔の古いジャズとはリズムが違う。特にドラムがヒップホップやドラムンベースのリズムを吸収して一回りした感じの音になっている。90〜00年代の頃はこういうドラムンベース的なリズムって機械でプログラムしてたんだよね。それが今ではドラマーが生身で再現できるようになってると(しかもプログラムされたドラムンベースよりも圧倒的にかっこいい)。, 「I Don't Even Care」から「Reckoner」の流れはロックのリスナーにもわかりやすいはず。, トランペッター。ロバート・グラスパーの延長線上にあるジャズ。ただロバート・グラスパーをR&B路線とするなら、クリスチャン・スコットはロック路線。音の構造がなんとなくレディオヘッドの組み立て方に近い。ジャズの音色でレディオヘッドのようなロックをやっている感じ? 音大卒の有名トランペッターとしては、マイルス・デイヴィスとウィントン・マルサリスに次ぐ3人目となるから、マイルスやウィントンと聴き比べるのも面白いかも。, まずは「Videotape」「Cages」「New Heroes」を聴いてみてほしい。, イギリスのピアノトリオ。クラブミュージックを人力でやってる笑。イー・エス・ティーの延長線上にある音だけど、イー・エス・ティーよりも若いからクラブサウンドに対する解釈が新しい。黒人の場合は音楽を作る動機に差別や貧困なんかがあるでしょ? でも彼らはイギリスの白人だから、戦うものがなかったりするんだよね。そりゃあ、こういうスタイル&音になるよね。, ドラマー。ロバート・グラスパーやゴーゴー・ペンギンのリズムってのは、ヒップホップやトリップホップを経由したドラムンベース的なビートなんだけど、この人のビートはちょっと違う。『BGM』前後のYMOのような音というか、80年代テクノ的というか。打ち込みのビートと言われても納得しちゃいそうな感じ。, スイスのピアノトリオ。ゴーゴー・ペンギンをクラブ的とするなら、コリン・ヴァロンは現代音楽的。シンプルな旋律を反復させていくスタイル。ミニマルミュージックと呼んでもいいかも。ずーっと聴いてられる感じというか。でもってこのシンプルなピアノをずーっと聴いてられるのは、彼らのリズムに対する解釈が面白いからだと思う。, 僕、ジャズのギターが大っ嫌いなんですよ笑。なんていうのかな、ギターって音域が狭くてムカつくの笑。アルペジオを弾くよりもパワーコードでジャーン!みたいなのがギターって楽器の理にかなった使い方だと思うし(ロックの聴きすぎかも)。ただこのアルバムはそんなつまんないことを気にすることなく楽しめる良作に仕上がっている。ソングライティングの部分にユーモアがあるからかな?, またしてもギタリスト。でもってこっちはギターのトリオ。ポストロック的な音なので非常に聴きやすい。ただロックバンド的なポストロックとはだいぶ違う。こっちの方がより理論的。, 日本人ピアニスト。バークリー卒だそう。このアルバムはジャズというよりエレクトロニカ。リズムが表情豊かで面白い。ヒップホップのリスナーにはア・トライブ・コールド・クエストの新作に参加した人と言った方がわかりやすいかも。, 定額制の聴き放題サービスならAmazon Music Unlimitedがおすすめです。, 聴き放題サービスってたくさんあって迷っちゃいますよね。Music Unlimited以外でメジャーなのはApple Music、LINE Music、Spotify、Google Play Music、AWAあたりでしょうか。僕も違いがよくわかっていませんでした。, でも全部を一通り試してみて、自然とMusic Unlimitedに落ち着きました。Music Unlimited、Apple Music、Spotifyとトリプルで契約していたこともあったんですが、気がついたらApple MusicやSpotifyで聴いていたものの多くがMusic Unlimitedで聴ける状態になっていたので、Apple MusicやSpotifyはすでに解約しています。, ICT総研が2018年に実施したアンケート調査によると、定額制音楽配信サービス市場におけるシェアNo.1はAmazonになっています。Prime MusicとMusic Unlimitedの2つのサービスを足すとぶっちぎりの1位になるのもすごいです。これはつまり資本が集まっている状態なわけですから、Amazonがこれからもっともっと数字を伸ばす(楽曲数が多くなる)可能性があると考えていいのではないでしょうか。, なので、悩んだらとりあえずMusic Unlimitedを選んでおきましょう。Music Unlimitedへの登録は以下よりどうぞ。今なら30日間無料で体験できます。. ダン・テプファー / Dan Tepfer 30,294 views, モダンジャズ時代はサックスとトランペット、1990年代以降はギターとサックス…とジャズの各ピリオドごとにどの楽器がシーンの中心になっているか考えたり、話し合うのが好きなジャズファンは結構多いのではないだろうか。, 2010年代はジャズ・ドラムの革新がよく取り上げられているが、演奏家としてだけではなく「作曲家」や「バンドリーダー」として総合的に考えた時、現在のジャズをリードしている楽器の1つにピアノを是非とも加えたい。今のピアニストが各コミュニティ、各サークルの人脈の結節点になっていることが多いのも大きな理由だ。ジェイソン・モランやマット・ミッチェルの足跡をたどればアヴァンギャルド・シーンが、ロバート・グラスパーをたどればR&B/ヒップホップ・シーンが、ファビアン・アルマザンやダビィ・ビレージェスをたどればNY=ヒスパニック・シーンが見えてくる。, 今回Untitled Medleyではアメリカで活動経験のある1975年から1989年生まれのピアニストの中から、音楽的にもジャズ・シーン的にも重要なミュージシャンを12人ピックアップ。これから現代ジャズを聴く人にも役立つ「ジャズ・ピアノの新定番」となるような作品を紹介してみた。, ちなみに、ミュージシャンの順番は基本的に生年順だが、近年のジャズ・ピアノの2大潮流、キース・ジャレット~ブラッド・メルドーのような「クラシカル/コンテンポラリー路線」と、アンドリュー・ヒル~ジェイソン・モランのような「アヴァンギャルド/Mベース路線」を強調するために若干手を加えている(この区分けはあくまでも便宜上のものだということに注意してほしい)。, Jason Moran (p) Tarus Mateen (b) Nasheet Waits (ds), ピアニストのジェイソン・モランを中心にベーシストのタラス・マティーン、ドラマーのナシート・ウェイツからなるバンドThe Bandwagonの結成10周年に際して発表されたアルバム。, モランは多岐に渡るサイドマンワークに加えリーダー作においてはクラシックやブルース寄りのレパートリーへの挑戦、サンプリングした(インタビューなどの)音声との共演など自身のピアニズムを拡張するような試みを積極的に行っているが、本作はジミ・ヘンドリックスのフィードバック音を用いた③、コンロン・ナンカロウの「自動演奏ピアノのための習作第6番」をモチーフとした2種類の演奏⑤、⑦などでそのような面も披露しつつ、作品の主たる聴きどころとしてはオーセンティックなジャズピアノの快楽に焦点が当てられている。, セロニアス・モンク作の④、ジャッキー・バイアード作の⑫が収録されているが、それらの先人達に連なるような楽曲の崩しの美学とその際の音楽的語彙の豊富さは①、⑨、⑩などでも存分に発揮されている。また、モランのリーダー作ほぼすべてで演奏されている「Gangsterism」シリーズである⑧は3者が一体となり速度や熱量を増しながら徐々に抽象的な演奏へ向かいつつも楽曲の型を絶妙な塩梅で維持するというこのトリオならではのバランス感覚が味わえるシリーズ屈指の名演であり最大の聴きどころだ。(よろすず), Robert Glasper (p, keys) Vicente Archer (b) Damion Reid (ds), ロバート・グラスパーがジャズ/R&B/ヒップホップ・グループ、「エクスペリメント」結成以前の新人時代に発表した二作目の作品。ヒップホップの影響はまだ現れていないが、瞑想的で癒しをもたらす独特の感覚は既にここにある。ピアノのゆったりとしたタイム感と、シンバルの打ち込みのような律動が重なって時間が歪む④の後半部は、彼が好きだというマイルス・デイヴィス”Nefertiti”を想起させる。カリンバの反復にアフリカ的な暗いメロディの歌唱が重なる⑦は独創的。ブルース歌手の母親の歌声から始まる⑩では、過去を慈しむようなピアノの旋律と深いゴスペル・フィーリングを湛えたビラルの歌声が胸を打つ。瞬く間に鍵盤の上を駆け巡り、両手を同期させたり、両手でモザイク模様を描いたりする特徴的なピアノソロも聴きどころだ。(佐藤), Aaron Parks (p, key, glockenspiel) Mike Moreno (g) Matt Penman (b) Eric Harland (ds), パークスが以降スタジオでガッツリと作り込んだ『Invisible Cinema』的な作品を制作していないのは少々残念だが、このサウンドは彼の在籍するジェイムズ・ファームやマイク・モレノ『Lotus』に受け継がれており、今日のジャズ・シーンの起点の1つになっている。(北澤), David Virelles (p) Thomas Morgan (b) Robert Hurst (b) Marcus Gilmore (ds) Román Diaz (vo), キューバ出身でブルックリンを拠点に活動しているダヴィ・ビレージェスのECMデビュー作となったアルバム。「ピアノ、2つのベース、ドラムセットとビアンコメコ・アバクアのための神聖な音楽」(アバクアはキューバに送られた西アフリカ系の黒人奴隷から伝わる密教的な信仰で、ビアンコメコはその儀式音楽に用いられる4つのドラムからなる打楽器アンサンブル)との副題がついており、前作『Continuum』から打ち出されたキューバの伝統音楽への関心、研究の成果が引き続き反映された作風となっている。, 収録曲ではすべてが前述の副題の編成で演奏されているわけではなく、ドラムとビアンコメコのどちらかとピアノ、ベースといういわゆるピアノトリオ編成のものも混在しており、それによってドラムセット不在の①、②における聴き手を不安にさせるほどの静謐さからドラムセットが強い存在感を示すハイブリッドなジャズといった印象の④、⑧までコントラストのある表現が楽しめる。ビアンコメコの演奏に加え⑤では歌も披露するロマン・ディアスの参加に象徴されるようなアフロ・キューバンのエッセンスを感じさせながらも、ポリリズミックなジャズといった面よりその乾いた音色の点描的な配置によって音の隙間に意識を向かわせるような場面が印象深く、音の鳴る空間やイメージとしての儀式性の創出への注力を感じさせる独自性の強い一枚。(よろすず), Gerald Clayton (p) Justin Brown (ds) Joe Sanders(b), 「ぼくらはセカンド・プライズのトリオなんだ」と冗談を飛ばすジェラルド・クレイトン。デビュー作から現在まで不動のレギュラートリオ=ジョー・サンダース(b)、ジャスティン・ブラウン(ds)。偶然にも3人ともがモンクコンペ“準優勝”という経歴を持つ。父親のジョン・クレイトンから受け継いだジャズの伝統に、ロイ・ハーグローヴの元でセンスを磨いたジェラルド。本人は「ジャズ」とカテゴライズされることを好まないが、彼が同世代のピアニストの中でも頭ひとつ抜きん出ているポイントこそ、ジャズの持つスウィング感に他ならない。2010年にリリースされたこの二作目で早くもピアノトリオとしての完成形を示している(以降トリオ編成での録音がない)。3曲の「ボンド」を軸にコンセプト・アルバムとして固めながら、”If I Were a Bell”をオープナーにもってくるあたりも本当にニクい。(藤岡), Fabian Almazan (p, electronics) Linda Oh (b) Henry Cole (ds) Camila Meza (vo) Sara Caswell, Tomoko Omura (violin) Karen Waltuch (viola) Noah Hoffeld (cello), 2017年作品『Alcanza』も記憶に新しいキューバ出身のピアニスト、ファビアン・アルマザンの二作目。全曲に弦楽四重奏がフィーチャーされているリゾーム・グループの最初の作品だ。時には主旋律を奏で、時には個々に分かれて異なった旋律を重ね合わせるストリングスが主役として楽曲をリード。ヴォイスが弦の震えと溶け合ったり、ピアノが弦楽の旋律を引き継いだりする構成によって、全楽器が有機的に結びつく。生音の豊かな響きとともに、休符の間さえも美しく聴かせる①や、急流のような弦楽隊の律動とピアノ・トリオの躍動が交錯する④、歌と弦が絡み合い、天に昇っていく⑤には溜息が出る。闇から抜け出そうと足掻く劇的な場面が浮かぶ②や、カミラ・メサの歌声が郷愁を誘うロマンチックな⑨など、情景を喚起する表現力にも触れておきたい。(佐藤), 『Rhizome』収録曲”A New Child In A New Place”のライヴ・パフォーマンス, John Escreet (p,key) David Binney (as,ss) Christ Potter (ts) Matt Brewer(b) Jim Black (ds), with: Adam Rogers (g) Louis Cole, Genevieve Artadi, Nina Geiger (vo) Fung Chern Hwei, Annette Homann (violin) Hannah Levinson (viola) Mariel Roberts (cello) Garth Stevenson (b) Shane Endsley (tp) Josh Roseman (tb), イギリス出身でアメリカ在住のピアニスト、ジョン・エスクリートの5作目となるリーダーアルバム。キャリア初期から取り組んできたフリー/インプロ的な場面と作曲パートを巧みに組み合わせた音楽の構成を引き継ぎつつ、曲によってストリングスやコーラスの導入などアレンジ面で新たな試みも見せる一枚となっている。, アルバムのイントロ的位置づけのストリングスのみによる①に始まり、二管の一糸乱れぬテーマのキメやテンションの高いソロをメインに聴かせる②、⑥、エスクリートの最大の持ち味ともいえる多彩な音楽的バックボーンを活かした作曲パートとフリー/インプロの複雑な場面転換の妙が(一部でストリングスを伴った)クインテットとピアノトリオという異なった編成で味わえる③、④、ギターやエレピの爽やかな音色を配しフュージョン的な軽やかさを演出する⑤、更にストリングス、コーラス、ハンドクラップなども交え後半にはポップスや映画音楽などの影響が感じとれるアレンジが加わる最終曲⑦まで、異なる聴き心地や聴かせどころをもった楽曲が並び、個々の楽曲や演奏の完成度だけでなくアルバムとしての色合いの豊かさが何より素晴らしい。, 演奏家、作曲家、アレンジャーなど様々な面を含めた彼の音楽家としての総合的な能力の高さが遺憾なく発揮された傑作だ。(よろすず), Sam Harris (p, synthesizer) Martin Nevin (b) Craig Weinrib (ds), with: Ben Van Gelder (as, bcl) Roman Filiu (as, fl) Ross Gallagher (b), アンブロース・アキンムシーレなどのバンドで活躍する気鋭のピアニスト、サム・ハリスのデビュー作。「間奏曲集」というアルバム・タイトル通り、ソロやアンサンブルによる物語的な展開を避け、ルバートや空間の多いリズムの上で演奏者がただただ所在なさげに浮遊する14曲の小品が並んでいる。楽想は統一感がありつつも中近東風の④、ヒップホップに通じるループ感の⑥、モダンジャズ的に戯画化された印象派音楽の⑪、親指ピアノのテクスチャが印象的な⑫など彩り豊か。, では作品全体は何を狙っているのかというと、それはルイス・ウェインやヘンリー・ダーガーの名を冠した楽曲が示唆しているように、精神病患者や社会的疎外者の描くアウトサイダー・アートの「名状し難い存在感」を再現するような音楽を目指したのではないだろうか(3曲収録されている”Manul at ◯◯◯”シリーズの元ネタは、ルイス・ウェインが描いたフラクタル模様のマヌルネコからだろう)。クラシックから民族音楽、エレクトロニック・ミュージックからポール・ブレイまでをパレットに、誰も聴いたことのないチェンバー・ミュージックを提示してみせた現代ジャズの隠れた名品。(北澤), Tigran Hamasyan (p, vo, key) Sam Minnie (eb) Arthur Hnatek (ds, electronics), with: Gayanée Movsisyan, Areni Agbabian (vo) Ben Wendell (sax) Chris Termini (b) Nate Wood (ds), アルメニア出身のピアニスト、ティグラン・ハマシアンのノンサッチ一作目。美しく透き通った流れるようなピアノと、暗く重い沈み込むようなリズムが対照をなし、光と闇が交互に訪れ、時にはその二つが重なり合うドラマチックな世界観が鮮烈だ。女性ヴォーカルが鳥のように羽ばたく②では、円環的な展開の連続に圧倒される。メシュガーの影響を感じさせる変拍子やヘヴィネスが強烈だが、アルメニアの伝統音楽をベースにした③と⑨の哀しげな旋律を始めに、アルバムを通して印象に残るのは声とピアノが紡ぐ独特のメロディだ。音そのものではなく世界が立ち上がるような表現力をみせる⑥のピアノ独奏や、電子的なビートの中を駆け抜ける⑪のピアノソロにも注目したい。(佐藤), Shai Maestro (p) Jorge Roeder (b) Ziv Ravitz (ds), with: Gretchen Parlato, Theo Bleckmann, Neli Andreeva, Kalina Andreeva (vo), イスラエル出身のピアニスト、シャイ・マエストロの四作目。基本的にピアノ・トリオの編成だが、各楽器のソロを減らし、メロディとサウンドに重心を置くことで、各曲の個性を的確に提示。曲調が多彩で一曲一曲が様々な情景を感じさせるので、短篇集を読んでいるような感覚を覚える。ピアノソロは少ないが、ホルヘ・ローダーのしなやかなベースソロが印象的だ。冒頭のモチーフが繰り返し登場し、インタールードとして曲想の異なる三つのピアノ独奏を挟み、⑮でピアノの残響が消え入るさまに耳を澄ませているうちに作品が終わる構成にはアルバム制作への拘りを感じる。②では透き通ったヴォイス、⑭では情感に溢れた歌声を聴かせるグレッチェン・パーラトの活躍が光る。(佐藤), Danny Grissett (p) Vicente Archer (b) Marcus Gilmore(ds), それまで比較的伝統的なシーンに身をおいていたダニー・グリセットが、空間をデザインすることに長けた前衛派のドラマー、マーカス・ギルモアを起用して吹き込んだ4作目のリーダー作。自由奔放なギルモアの参加によって、クラシック出身のグリセットが持っていた緩急自在のタイム感がいかんなく発揮されている。また、フォーマットは正統派ピアノ・トリオながら、誰一人タイムキープせずに三者が疾走するような緊張感も本作の魅力。, 重量感のあるベースリフと流麗なピアノの対比がかっこいい①、朝焼けに包まれた町並みの中にいるような情景音楽②では、グリセットのストーリーテリングの上手さと、繰り返されるモチーフが単なるループにならない感情が乗ったピアニズムが炸裂。続くショパンの③では、荘厳なオープニングと好対照のドライブ感あふれる演奏。6曲目はトム・ハレル、7曲目はニコラス・ペイトン、8曲目はビル・エヴァンスの演奏で名高い”Some Other Time”と、カバー・センスにもニヤリとさせられる。(北澤), Matt Mitchell (p, electronics) Tyshawn Sorey (conductor), Anna Webber, Jon Irabagon, Ben Kono, Sara Schoenbeck, Scott Robinson (winds), Kim Cass (b) Kate Gentile (ds, per) Ches Smith (vib, per) Dan Weiss (tabla) Patricia Brennan (vib) Katie Andrews (harp), ティム・バーン、スティーブ・コールマンなどのユニットメンバーでもある新鋭ピアニスト、マット・ミッチェルの4作目。ドラマーのケイト・ジェンティルとのユニットSnark Horseにて書かれた楽曲の1小節を基に組曲を作るというアイデアや、木管楽器とパーカッションに重きを置いた新たな器楽パレットへの欲求に基づく本作は、5人の木管楽器奏者、4人のパーカッション奏者、ベース、ハープとピアノ、指揮という総勢13名が参加した風変わりな編成になっている(全員が演奏に参加するのは④”Brim”のみで、他は5~10名の異なった編成での演奏)。, 作曲パートと即興パートを直列的に繋ぐだけでなく、細かく書き込まれたリズムの伴奏に管楽器のフリーブローイングが乗るなどそれらの要素を並列的に走らせるような場面も多く、ひとつの楽曲の中で作曲と即興がスリリングにせめぎ合いアヴァンギャルドな聴き心地を生んでいる。また前述した楽曲ごとの編成の違いやインタールド的に配された4つのエレクトロニクス作品によってアルバム中での音色のテクスチャーにも多様性があり、総体として音楽を形作る様々な面で掴み切れないほどの複雑さを感じさせるキメラのような印象を残す一作となっている。(よろすず), オリン・エヴァンス / Orrin Evans