5分, ニトロ基は強力な電子求引基として、芳香族アミン類の合成の足がかりとして重要です。ニトロ化は古くから知られている反応で今日までに多くの方法・条件が報告されています。今回はニトロ化について紹介します。, 代表的なニトロ化は、芳香族求電子置換反応により芳香環の水素をニトロ基に置換する反応です。, 求電子置換反応の概要 求電子試薬と芳香族との反応を芳香族求電子置換反応といいます。, ニトロ化が有名なのは、芳香族化合物の基本的な反応であること、ニトロ基が他の官能基に変換しやすいことが理由です。, 最も基本的で有名なニトロ化反応の条件は、硫酸と硝酸の2つの酸を混合させた「混酸」を使う条件です。1834年にMitscherich1)が報告して以来、強酸を使用する比較的激しい条件にもかかわらず、現在でも第一選択的なニトロ化反応として使われています。, ニトロ基は様々な置換基に変換可能なアミノ基に容易に変換することができるため有用です。, ニトロ化は芳香環のニトロ化のほか、アミン、オキシムの酸化のほか、アジド、ハロゲン、アルデヒドからニトロ基に変換可能です。, ニトロ基の変換は還元によりアミンを得る他、水素、求核剤との置換、アルデヒド、カルボン酸、ニトロソ基にも変換可能です。, ニトロという言葉自体が爆発物を意味しそうなほど、ニトロ化合物が爆発物であるという印象は広まっているのではないでしょうか?実際にダイナマイトの原料である「ニトログリセリン(グリセリンの硝酸エステル)」やトリニトロトルエン(TNT)などが有名どころです。, ニトロ化号物がなぜ爆発性を示すのか?どのような化学反応が起きているのか?という点に関して複雑で難しいです。, ニトロ基が酸素を多く含むため酸素なしで燃焼できるとか、至極安定なN2を生成するという説明がなされることがありますが、TNTは着火しても爆発しないといわれています。TNTを爆発させるためにはより簡単に爆発する物質を使って爆発させます。, ニトロ化合物の反応性を議論する時に電子求引性は欠かすことはできません。ニトロ基の電子求引性はあらゆる官能基のなかでも最も強いです。, 化学反応は電子の受け渡しで反応が進行するため、ニトロ基が入ると芳香環に入ると電子がニトロ基に奪われるため大きく反応性が低下します。そのため芳香環にニトロ基をたくさんいれるのは大変です。, 硫酸は硝酸を脱水してニトロニウムイオンを生成します。芳香環の電子がニトロニウムイオンに攻撃し、ニトロ化が進行します。反応機構からわかるように硫酸がなくてもニトロ化が進行します。, ニトロ化反応は早く、発熱的に進行するため、通常は冷却しながら行います。温度が高くなると副反応が起きるので注意しましょう。, ニトロ化の最もシンプルな方法は硝酸を使った反応です。硝酸は電子豊富な芳香環のニトロ化に使われます。, 二酸化窒素が溶けた発煙硝酸や無水硝酸(等量の濃硫酸との蒸留によって得られる)なども同じように使うことができます。高濃度の硝酸中には、酸化作用の強い亜硝酸が含まれており、副反応(酸化)を起こす可能性があるので、尿素処理して(硝酸500 mLに対して尿素3gを10分間加熱撹拌後、冷却して利用)亜硝酸を取り除いてから使用したほうが良い結果が得られるかもしれません。, 混酸は「硫酸」と「硝酸」を使ったニトロ化法で、最も基本的で一般的なニトロ化方法です。, 硫酸を加えることによって、硝酸から反応性の高いニトロニウムイオン(NO2+)を発生させます。混酸を用いた反応は発熱的に進行するため副反応を抑えるために低い温度(-20℃~50℃)を保って反応させましょう。, ニトロ化反応を行う時は発熱するためゆっくりと加えたり氷浴を使って温度管理に気をつけましょう。温度が上がって副反応が起こると酸による分解やポリニトロ体などが生じることがあります。, 等モル硝酸に対して、10mol%程度の金属塩を触媒として加えてニトロ化を行う方法は、等量の硝酸で反応させることができるので、過剰量の硝酸が不要でニトロ化を制御しやすく、副反応も抑えることができるのが利点です。使用される金属は、Sc、Yb、Hf、La,などのトリフラート塩などがよく用いられる。不活性な芳香環(o-ニトロトルエンや1,3,5-トリフルオロベンゼン)などには、Hf(OTf)4、Zr(OTf)4やあるいはSc(CTf3)3やYb(CTf)3が有効です。混酸のニトロ化は1時間程度と短いですが、トリフラート塩を使った場合、反応時間は24時間前後と長いです。溶媒には1,2-ジクロロエタンなどが用いられています。反応溶液は二層となって有機層はニトロ化に伴い黄色く色づいていき、反応とともに境界は分かり難くなっていきます。トリフラート塩は回収・再利用可能です。(水層を回収して濃縮すると回収できる), 硝酸と無水酢酸により生成する硝酸アセチルを使ったニトロ化は、酸化や加水分解に対して敏感な官能基を持つ芳香環のニトロ化に使われます(アセトアニリドやアニソール、不飽和アルデヒド、エステルなど)。無水酢酸と発煙もしくは濃硝酸を塩氷浴中で混合させて調整します。硝酸源として硝酸銅も使えます。欠点としては、硝酸アセチルの爆発性があるので、20℃以下で取り扱うようにします。アミドなどの置換基に対してオルト選択性があります。, 硝酸を使用せずにニトロ化できるため、水が混入せず、酸加水分解に弱い官能基(シアノ、エステル等)を含むものでもニトロ化できるメリットがあります。また、反応性の低い芳香環もニトロ化にも向いていて、例えば反応溶液をフルオロスルホン酸中で行えば、かなり不活性なメタジニトロベンゼンをもニトロ化することができます。, NO2BF4を用いる方法は、非水系で非酸性(HBF4は副生する)で反応を行えます。芳香族化合物を3倍量程度に過剰に加えるとジニトロ化を抑えられ、アルキル基、ハロゲン(フッ素とか)、ニトロ、エステル、シアノ基を有するものでも短時間(30分)、低温度(5-50℃)でモノニトロ体が得られます。, NO2BF4は固体もしくはスルホラン溶液のものが売られています。この試薬のデメリットは溶解性が悪さで、スルホランやアセトニトリル(最も溶ける)にしかとけません。また吸湿性の高いので湿気を避けます。, TfO2と濃硝酸との反応により調整されるNO2+Tfーは溶解性が高く。溶媒としてはニトロメタン、ジクロロメタン、四塩化炭素、ペンタン、硫酸、TfOHを用いることができます。反応性が高くトルエンなどのモノニトロ化には-78℃から徐々に0℃にして反応させる方法をとる。不活性なF、Cl、NO2、CF3ベンゼンのモノニトロ化は0℃~室温で反応させて得ます。, この試薬は反応性が高く、特に不活性なニトロ化に対して有効です。ペンタフルオロベンゼンなどより不活性なベンゼンのニトロ化も室温3hで可能です。本試薬は三塩化ホウ素+TfOHに硝酸を加えて、系中で発生させる。, 硫酸や熱に対して不安定な基質に対して有効です。発煙硝酸と五酸化リンによる脱水、蒸留により得ます。条件は過激なため大量合成には向いていません。反応性はかなり高く、不活性でない芳香環とは爆発的に反応するために使用は避けるべきです。。(トルエンは0℃で10分, quant)で得られます。Fe(Acac)3触媒は反応性を劇的に向上させ、トルエンは-100℃で定量的にニトロ化され、ベンズアルデヒドも0℃4minで定量的にニトロ化が進行する(o:m:p=18:60:22), ピリジンのニトロ化にも有効で、ニトロメタン、NaHSO3存在下のニトロ化は70%程度で得られます。(混酸は3%程度), オゾンと二酸化窒素を使用する京大法は中性条件でニトロ化できるメリットがあります。ただしオゾンガス、二酸化窒素ガスを用意するのは難しいかもしれませn。スチレンのニトロ化は側鎖のニトロ化が進行してしまいます。芳香族ケトン、アニリド、多縮環芳香族化合物のニトロ化が成功しています。, 硫酸と亜硝酸ナトリウムなどを用いる方法は固体であることから正確に秤量できる点が利点です。, ゼオライトやモンモリロナイトなどの固体酸の使用は強酸の使用を減らしたり、ニトロ化反応の選択性が変化するなどの利点があります。, マイクロウェーブ照射はニトロ化にも有効な場合があります。Sodium nitrateと酢酸で、フェノールのモノニトロ化に数分で高収率で変換できます。希硝酸と酢酸を用いた条件でもマイクロウェーブが利用可能です。, アミンをジアゾ化し、亜硝酸ナトリウムで処理するとニトロ体が得られます。有名な人名反応です。, 過酢酸、過ホウ酸ナトリウム、オキソンーアセトン、ジメチルオキシラン、などが酸化剤として利用されます。ハロゲン、ヒドロキシ、メトキシを含むアミンをニトロ化したいときに使います。酸化剤ではオキソンが便利でおすすめです。.