日本経済新聞社の調査によると、「取得したいビジネス関連資格」で2016年に1位を獲得した。中小企業診断士は「経営コンサルタント」を認定する唯一の国家資格で、有資格者は全国で2万4000人程度いる。名刺交換の際、「中小企業診断士」という文字を目にしたことがある人もいるだろう。, 合格率は4~5%と、難易度はかなり高い。それもそのはず。毎年8月に実施される一次試験は土日2日間かけて7科目(経済学・経済政策/財務・会計/企業経営理論/運営管理/経営法務/経営情報システム/中小企業経営・政策)の学科テストがある。合格者は10月と12月に実施される二次試験で、記述と口述のテストが課される。, 試験内容は多岐に渡るが、経営に関するひととおりの知識が学べるということで企業に勤めるビジネスパーソンから人気がある。実際、合格者の7割が企業勤めだ。, しかし、である。当の中小企業診断士たちは苦労して取得した自らの資格を「足の裏の米粒ですから…」と自嘲気味に語る。(資格を)取っても食えないという意味で、足の裏に付いた米粒と同じだというのだ。合格するまでには最低でも1000時間の勉強が必要と言われており、働きながら資格を取るには3~5年は要するだろう。それだけ時間と労力(とお金)をかけても食えないのであれば、費用対効果が悪すぎる。, 理由は中小企業診断士だけに認められる「独占業務」がないからだ。いわゆる士業(弁護士、弁理士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、司法書士、行政書士、不動産鑑定士、建築士など)には、法律・法令によりその資格を持つ者しか認められていない独占業務がある。, 中小企業診断士と難易度が同程度と言われる社労士の場合、①労働保険や社会保険の手続きに係る書類作成・提出、②企業における就業規則の作成・届出、そして③厚生労働省系の助成金の申請…と、独占業務は多岐に渡る。それだけ収入の機会があるということだ。, 中小企業診断士を所管する中小企業庁は、中小企業へのコンサルティングも担える「日本版MBA」と持ち上げる。だが、実際に中小・小規模事業者の支援で貢献している人は少ない。まさに、「宝の持ち腐れ」と言える。, では、何のために中小企業診断士は存在するのだろうか。現役の診断士3人に現状の課題と今後の期待を話し合ってもらった。, まずはそれぞれの方に、なぜこの資格を取ろうと思ったのか。その経緯からお伺いします。では、土屋さんから。, 土屋:私は大学卒業後にNECに入社して、はじめに配属されたのが新事業企画みたいな部署でした。2年目から経営企画に異動しました。当社は、最初人事に入るとずっと人事とか、経営企画に入るとずっと経営企画・・・という会社です。そこで経営企画の中でやっていくために、めぼしい資格を取りたいなという思いがありました。, 土屋:そうですね。中小企業診断士かMBA(経営学修士)のどちらかを取りたいと考えました。もともと私がNECに入ったのは、ITで地方を活性化したいという思いがありました。, 私の出身は長野県なのですが、不便なところで、当時インターネットとか、そういうものが出てきたような時期でした。ネットが普及すれば、地方でも生活がどんどん便利になっていくんじゃないか、と思っていました。ただ、会社に入って実際にやってみると、ITなど技術だけじゃなくて、その経済圏をうまく活性化するのはどうすればいいのか、そこまで考えなければならないということが分かってきました。, 田舎のコミュニティーを元気にするためには、勤め先が増えないと結局人も増えない。要はその地域にある会社の経営をもっと強くする必要がある。ITも大事だけどもっと重要なことがあるんじゃないかなと思って、その辺りを自分でもっと支援できるようになりたい。そこで国が定める経営コンサルタントとしての、中小企業診断士の資格を取ろうと考えました。, 土屋:それが結構苦労しまして……(笑)。資格学校などに通う人もいますが、私は独学で勉強しました。だから資格を取るのに、4年かかりました。32歳の時です。, 別に他の士業(私の場合は税理士)を持ってたとしても、それだけによる恩恵なんてほぼ無いんですがね。趣味で中小企業診断士の一次だけ受かった事はありますが、全部自費でしたし、2次に至っては日程調整が付かず受けられずじまい。建設会社勤務ですが、施工監理技術者(2級でも)や消防設備士の方がよほどありがたられますね(お金も出るし)※建設業経理士は全く意味なし(1級持ってる意見)インタビューの方々の場合の診断士はただのきっかけで、持ってるかどうかは大した意味ないと思いました。, 30代前半の頃、中小企業診断士を志した事がありました。その理由は独立やコンサルへのジョブチェンジではなく、中小企業の経営を網羅的に学びたかったからでした。学びが未来の自分の糧になるとぼんやりと思っていたのです。当時から年月が経った今は、経営を網羅的に学ぶことより、経営に活かせるいくつかの特化した強みを持つ重要性を感じます。その意味では社労士の方が具体的であり魅力に映ります。診断士取得により得られる「尖った」強みが何か、それが魅力的であれば、この先私のような人間が再びこの資格に群がるように思えます。, 建築士も「足の裏の米粒」資格ですよ。業務独占でも設計料はただ同然の金額。そんな資格は多いと思います・・・, 企業内診断士として意見を述べさせていただくと、確かにこの資格の費用対効果は悪いです。有資格者だからといっても収入の増加につながらず、一方で資格維持のために費用も時間もかかります。しかし、それでもこの資格を取ってよかったと思っています。個人的には、中小企業診断士資格は「パスポート」だと考えています。本文でも触れられておりますが、中小企業診断士は業務独占資格ではないがゆえに、実に多用な人が有資格者となっております。中小企業診断士という資格があれば、これらの方々とつながることができ、可能性が一気に開けます。このような人脈は、勤務先の業務であれ、コンサルタントして活躍する上であれ、非常に価値あるものとなります。もちろん、こういった定性的な話でしか資格の有用性を語れないことは、この資格の弱点だと思います。実際、有資格者の7割を占める企業内診断士がどうやって活躍していけばいいかについては、中小企業診断士協会においても重要なテーマであり、検討が進められているものの、具体的な成果に至っていないのは事実です。さりながら一つの可能性として、最近はサラリーマンの兼業が認知されつつあるので、この機運がさらに高まっていけば、企業内診断士が活躍する土壌は広がってくるものと考えます。, 制度が出来た頃、一度考えたことがありましたが、若かったし、サラリーマンがこの資格で得られるメリットがクリアでなかったこともあり、本格的に勉強を始めるまでに至りませんでした。記事の最後に「中小」企業だけではないとありますが、この名称でだいぶ損している面があると思います。経営者が背に腹は代えられないと思っていれば別ですが、所詮「中小企業・・・」相手のコンサルか、と言う響きが資格とその能力の印象を損なっている面があるのではないでしょうか。専任業務を作る気はないと言う話でしたが、資格名称の変更ぐらい検討しても良いのではと思います。中小の文字を取って「企業診断士」とするだけで世間や相手が受けるそのイメージや期待、自身の自覚や責任感や、やる気と言ったものがずいぶん「アガル」事と思います。猫も杓子もMBAと騒がれたのも、その肩書きの響きの良さもあったと思います。もし「企業経営構築士」や「経営改善解析士」のようないかにも「やってくれそうな」、響きの良い士名だと、更に「活躍」が期待できるのではないでしょうか。, 企業内診断士です。確かに資格を全く活かせてはいません。中小企業の役に立ちたいと考えて取得した資格ですが、本当に取得後の行動次第なんですよ。そろそろ更新の時期ですが・・・研修を受ける余裕もなかなか取れない!!「企業内診断士会交流会」には参加してみたいですね。最近は多忙につき、活動自体も忘れていました。本当は中小企業の役に立ちたいとも思っていますが、それでは食べていけないのも真実です…しかし、この記事を見て少し勇気づけられました。来年更新ですが、いろいろな意味で余裕がないかもしれないと危惧しています・・・, 私自身、20年ぐらい前に受けようかと考えたこともあったが、よくよく考えると「コンサルタント」は無資格でも(対象によっては、建設業法などの影響を受けるが。)開業できる。ましてや勤務資格者ならアマチュア無線並の無意味資格である。となれば、一発合格したとしてもコストと手間があまりにも不合理なので、そもそも勉強をやめてしまった。逆の立場で、取得者とたまに仕事で会うが、知識の量と質が私の勤務先に必要とされるジャンルでもないのは悲しい。, 各種の資格もよく見てみればそれを管理する国の役人の食い扶持を確保し、資格学校や通信教育事業者を儲けさせるためのものも少なくありません。今や弁護士でも独立してやっていくのは難しい時代ですから、この資格だけで食っていくのは並大抵のことではありますまい。かと言って企業勤めの傍らで副業をしようというのでは中途半端に陥るでしょう。私は担当する仕事の延長で宅建や行政書士などを取ってきました。もちろんこれで独立しようなどとは夢にも考えませんが、仕事はもちろん私生活でも住宅取得や親の相続などでその知識が役に立ちました。資格は勉強した自分への自信と賢く生きる術を身につけたぐらいの感覚でいた方が良いのかもしれません。, 中小企業診断士の資格更新のくだりは、肝心な部分が抜けています。更新要件は、・30ポイントの実務従事(要は30日間のコンサルティング実務)・5回の理論政策更新研修受講(講師、論文提出も可)の両方が必要です。, 日経ビジネス電子版のコメント機能やフォロー機能はリゾームによって提供されています。.