更新:2020-01-12, 過去3年間に渡る「大人のMusic Calendar」の歴史に於いて、一度も登場していなかったのが不思議な超重要歌手、その一人が伊藤咲子だ。今年目出度く還暦を迎えた4月2日の誕生日(ちなみにこの日は筆者最愛の女性歌謡歌手・涼川真里の誕生日でもある)にさえチャンスを見つけられず、満を持してやっと初登場である。44年前、1974年(昭和49年)の本日4月20日は、そんな伊藤咲子のデビュー曲「ひまわり娘」が発売された日だ。今回はこの曲を中心として話を進めていきたい。, 伊藤咲子には、オリコンチャート(100位以内)入りしたヒット曲が13曲あるが、その割に「切り札」と呼べる楽曲の含有率が実に大きい。現在に至るまで数多のカヴァーを生み続けているスタンダード曲「乙女のワルツ」(75年)でさえ、売り上げ的には第3位(オリコン最高24位)であり、ベスト10入りした2曲「木枯しの二人」(74年)「きみ可愛いね」(76年)はアイドル史に残る名曲達だ。ネクストランナー的位置につけている「青い麦」(75年)や「いい娘に逢ったらドキッ」(76年)さえ、ベスト10常連アイドルの地味な曲より遥かに筆者の印象に残っているし、近年はチャート入りを逃したアイドル時代後期の名曲「つぶやきあつめ」(78年)の評価も高まっている。しかしやはり、ファーストインパクトという点で、デビュー曲「ひまわり娘」こそが彼女の「決定的切り札」ではなかろうか。, 伊藤咲子は、73年8月12日放映された「スター誕生!」第8回決戦大会で認められ、翌年東芝からのデビューが決まる。そこまでのシンデレラストーリーに関しては、様々なサイトに書かれているのでここでは触れないとして、ここではその時期的重要性を軸としてみたい。 73年10月、東芝のレコード部門・東芝音楽工業株式会社は、英国の名門EMIレコードと東芝でほぼ持ち株半々の会社となり、社名を「東芝EMI株式会社」と改称する。従来ザ・ビートルズ、ピンク・フロイドなどを日本に紹介し、欧州EMI系レーベルの窓口として機能していた「オデオン」レーベルも、英国原盤のものはこれを機に「EMI」レーベルへと移行するなど、ドラマティックな改革がいくつかあったが、歌謡曲・和製ポップス部門にもその波は及んでいた。華々しく「EMI色」が打ち出され始めていたのである。, 「心の旅」のメガヒットで一躍スターダムに躍り出たチューリップは、その勢いで英国のEMIスタジオ(言うまでもない「アビイ・ロード・スタジオ」である)での録音を敢行、その成果がアルバム『ぼくがつくった愛のうた』としてリリースされたのは、ザ・ビートルズが英国でデビューした丁度22年後となる74年10月5日だった。同日リリースされたザ・ジャネット(のちにオフコースのバンド時代を支える松尾一彦と大間ジローが在籍)のデビュー・アルバム『グリーン・スピードウェイ』も、一部アビイ・ロード・スタジオ録音という触れ込みで大々的にプッシュされた。英国録音ではないものの、クリス・トーマスをプロデュースに迎え、ワールドワイドな音楽的展開を図ったサディスティック・ミカ・バンドのセカンド・アルバム『黒船』からの先行シングル「タイムマシンにおねがい」まで、この日にリリースされていたのである。まさに「英国バンザイ」状態だった。しかし、それらより半年早かった英国録音の超重要曲があった。それこそが「ひまわり娘」である。, 東芝EMIと社名変更して初の本格的アイドルプロジェクトということで(厳密には同じく「スター誕生!」出身となる堺淳子が、73年11月に「祭りの想い出」でデビューしているのだが)、ただならぬ力が伊藤咲子のデビューに注がれたが、その一つが英国でのデビュー曲録音であった。作曲家として起用されたのは、当時デュオ、シュキ&アビバの一員として活動していたイスラエル人のシュキ・レヴィで、彼らの日本でのデビュー曲「愛情の花咲く樹」を手がけた阿久悠が作詞。そして、英国人アレンジャー、ケン・ギブソンによりアレンジがまとめられた。これこそがこの曲の最重要ポイントだ。 【4番】 着物をきかえて 帯しめて 今日はわたしも はれ姿 春のやよいの このよき日 なによりうれしい ひなまつり. 後にケン・ギブソンは大場久美子のサード・アルバム『カレンダー』(78年)の英国録音ディレクターに関わり、そこには参加ミュージシャンのクレジットが詳細に記されているのだが、伊藤咲子のアルバムにそれが記されていないのが残念でならない。どのスタジオが使用されたかだけでも気になる。ちなみにサッコ・クーミン共々、制作ディレクターは筆者の考えるところの「日本のジョージ・マーティン」、渋谷森久である。, 伊藤咲子の快進撃は2作目のシュキ作品「夢みる頃」を挟み、3枚目のシングル「木枯しの二人」を皮切りに三木たかし作品で怒涛の攻勢に入るのだが、それに関してはまた別の機会に。ニューアルバム『恋する名曲娘』発売も目前に迫り、まだまだ現役度を緩めない大歌手に乾杯。, 【著者】丸芽志悟 (まるめ・しご):不毛な青春時代〜レコード会社勤務を経て、ネットを拠点とする「好き者」として音楽啓蒙活動を開始。『アングラ・カーニバル』『60sビート・ガールズ・コレクション』(共にテイチク)等再発CDの共同監修、ライヴ及びDJイベントの主催をFine Vacation Company名義で手がける。近年は即興演奏を軸とした自由形態バンドRacco-1000を率い活動、フルートなどを担当。 2017年5月、3タイトルが発売された初監修コンピレーションアルバム『コロムビア・ガールズ伝説』の続編として、新たに2タイトルが10月25日発売された。, 当ウェブサイトに掲載の記事、写真などの無断転載、加工しての使用などは一切禁止します。. “当たり前に思えることが実はそうではなくて、かけがえのないものなんだ”ということをテーマにしました。, 最初は、ドラえもんを与えられたのび太ばかりが良い思いをしていると思っていたんです。でも映画を観たら、ドラえもんものび太に支えてもらっていて、そこに自分の居場所を見つけたんだなということがわかって。お互いがお互いを必要とし、認め合っている、二人でひとつのような関係性を、描けたらと思って歌詞を書きました。, 作者の意図や訴えを知ること、考えることでその音色は何通りにも変化します。 しかしながら多くの方々はメロディーと歌声ばかりに耳が向き、「作曲された意図」を考えていません。 私はそんな方々の代わりに楽曲の解釈・考察をして、新たな音楽の楽しみ方を提供したいと考えています。 「楽曲考察」の文化を一緒に築き上げて行きたいです。, Twitterでのシェアや議論大歓迎です。 本気の音楽好きライターさんも募集しています!, お仕事の依頼はDMかメールをお願いします! satousiomi.official@gmail.com. ©Copyright2020 Sugar&Salt Music.All Rights Reserved.